医師監修 生活主看病予防・治療特集Vol.3:指導でも薬でもない「第三の選択肢」を、どう見極めるか|クリニック導入前の確認事項

医師監修 生活主看病予防・治療特集Vol.3:指導でも薬でもない「第三の選択肢」を、どう見極めるか|クリニック導入前の確認事項

指導を重ねても数値が動かない患者さんに、次に何を出せるか。外来で繰り返し突き当たる問いですが、簡単な答えはありません。

薬という選択肢はありますが、肥満症の薬物療法にはBMIや健康障害の要件があり、処方する側にも施設基準があります。要件を満たして処方できた場合でも、食事療法と運動療法は前提として残ります。

指導と薬物療法のあいだにある空白に何を置けるのか。生活習慣の改善を患者さんが実際に続けられるよう、外来で何を足せるかは、これからの診療を考えるうえで大きなポイントになります。

ここでいう「第三の選択肢」は、食事療法・運動療法や薬物療法に置き換わるものではありません。どちらを選んでも残る「続けられるかどうか」を支えるもののことです。

これといった決め手はまだありません。ただ、候補を評価する枠組みは持っておいたほうがいいと思います。何を基準に判断するかが決まっていないと、営業資料の出来不出来で採否が決まってしまうからです。

「第三の選択肢」に求められる3つの条件

指導と薬物療法のあいだに置くものは薬ではないので、薬と同じ基準では評価できません。かといって「体によさそうだから」で採用するわけにもいかない。外来で扱うものである以上、少なくとも次の3つは満たしている必要があると考えます。

1. 安全性が高く、長期に続けられること

ここに置くものは、数か月から年単位で続けることが前提になります。想定する期間と摂取量での安全性が確認されていること、アレルギーや持病、妊娠・授乳、医薬品との相互作用が評価されていること、そして既存の治療を妨げないこと。機器やプログラムであれば、継続時の負担がここに含まれます。

2. 患者さんが自分で続けられること

実務上いちばん効くのがここです。どれほど良いものでも、患者さんが続けられなければ意味がありません。費用、手間、そして生活のどこに組み込むか。続けやすさはそのもの自体の性質に含まれるので、評価項目から外せません。

3. 医師が説明責任を果たせること

なぜこれを勧めるのかを、患者さんに自分の言葉で説明できるか。ここが曖昧なものは外来に置くべきではありません。

説明できるということは、根拠を示せるということでもあります。提供元が公開していない内部データや、出典の示されない「実感」では説明になりません。公的研究機関や大学の報告、査読を経た論文など、第三者が検証できる形で出ているかどうか。規模が小さくても構いません。限界まで含めて公開されているほうが、むしろ説明はしやすくなります。

説明できないものを渡すことは、それまで積み上げた信頼を削ります。逆に、説明できるものであれば診療の一部になります。

外来で使える選択肢|デジタル療法・栄養指導・食事宅配・CGM

条件が決まったところで、実際に何が候補になるのかを見ておきます。この領域では、すでにいくつもの試みが動いています。

①行動変容支援アプリやデジタル療法

この数年でもっとも進んだ領域の1つです。生活習慣病でも、高血圧に対する治療補助アプリのように薬事承認と保険適用を受けたものが登場しました。日常生活のなかで記録と介入を続けられる点は条件2に合いますが、効果は対象疾患やプログラムによって異なり、患者さんのデジタル機器への習熟度にも左右されます。肥満や減量に特化したものは、まだ限られているのが現状です。

②管理栄養士による介入の強化

生活習慣の改善を支援する方法としては、比較的エビデンスが蓄積している領域です。ただし人員を確保できているクリニックは限られます。オンラインの栄養指導を外部に委託すれば人の壁は下がるものの、診療との情報連携をどう設計するかという別の課題が出てきます。

③食事宅配で食環境そのものを変える

献立や量を選ぶ負担を減らせるため、食事療法を実行しやすくなる可能性があります。費用の負担が続くことと、家族と同じ食卓を囲む患者さんでは機能しにくいことが弱点になります。

④CGM(持続血糖モニタリング)によるセルフモニタリング

食後の血糖がどう動くかを患者さん自身が目で見られる点で、指導では届かない納得のさせ方ができます。ただしCGMの保険適用には糖尿病の病型や治療内容などの条件があり、減量や生活習慣の改善のみを目的とした使用は原則として自費になります。また、血糖の動きが見えること自体が、体重減少や長期的な行動変容につながるとは限りません。

並べてみると、多くは体制や契約を必要とすることがわかります。人を雇う、サービスと契約する、機器を導入する。どれも有効ですが、着手のハードルはそれなりにあります。

その点、食品や栄養素によるアプローチは、いまの外来の枠組みを変えずに足せます。人を雇うことも、サービスと契約することも要りません。患者さんの側も、日々の食事に組み込むだけなので負担が小さいと言えます。患者さんの栄養状態を支えることは大きな意味を持つので、サプリメントなどの栄養補助食品は否定すべき選択肢ではないと思います。

続けられるかどうかは「摂り方」の設計次第

栄養面からのアプローチを、先ほどの条件に照らして見ていきます。まず2つ目の、続けやすさから。

行動として続けやすいのは、すでにある習慣に紐づけられるものです。新しい行動を日常生活に組み込む難しさは、食事療法・運動療法の継続を妨げる要因のひとつです。その点、食事とともに摂る形式には利点があります。食事という日常的な場面に紐づけられるため、独立した新しい習慣を設けるよりも続けやすいと考えられます。

もうひとつ見落とされやすいのが、摂り方の設計です。同じものであっても、いつ摂るか、どのように摂るかによって続けやすさは変わります。

岡山大学の研究グループが市販の国産桑の葉茶を用いて行った研究では、従来推奨されていた「100〜150mL程度の水や湯に溶かして飲む」方法と、「口に含んだ少量の水で顆粒を直接摂る」方法とで結果が異なり、その後の継続試験では後者の摂取方法が採用されています。同じものを同じ量だけ摂っても、摂り方の設計次第で得られる結果は変わりうる、ということです。

これは桑の葉茶という特定の食品について報告されたもので、結果をそのまま他の食品に当てはめることはできません。ここで参照しているのは、あくまで「摂り方の設計が結果を左右しうる」という一般的な論点です。

外来で案内するときも同じです。渡して終わりにせず、いつ、どのように摂るのかまで具体的に伝えておきたいところです。

健康志向の粉末製品に共通していること

ここ数年、栄養補助を目的とした粉末製品の市場が世界的に拡大しています。複数の栄養素を配合したマルチニュートリション製品、モリンガ、そして抹茶。日本の抹茶が世界的に評価されたことが、この分野の地ならしをした面もあります。

これらの製品群には共通点があります。ほぼすべてが植物由来だということです。

緑色の粉末で、植物由来で、複数の栄養素を含む。カテゴリとしては充実していますが、裏を返せば素材の幅がありません。動物由来の素材を用いた製品は、この分野にほとんど存在しないのが現状です。

その数少ない素材のひとつが、日本で古くから産業として扱われてきました。

養蚕という産業と、そこから生まれた食品素材

それは、カイコです。

養蚕の起源は5000年以上前の中国にさかのぼるとされ、その技術はのちに日本にも伝わりました。産業として本格的に育て上げたのは近代の日本です。明治以降、生糸は主要な輸出品のひとつとなり、全国各地で養蚕業が発展しました。その過程で、カイコの品種改良や飼育技術、桑の栽培方法に関する研究が国家的な規模で進められています。

化学繊維の普及などによって養蚕業の規模は縮小しましたが、カイコや繭を素材として活用する研究は現在も続いています。繭は主に、フィブロインと、その周囲を覆うセリシンという2種類のシルクタンパク質から構成されており、繊維だけでなく食品、化粧品、医療材料への応用も研究されてきました。食品として見た場合にカイコから得られるのは、このタンパク質です。

カイコは主に桑の葉だけを食べて育ちます。そのため養蚕は、カイコの飼育と桑の栽培を組み合わせて発展してきました。日本が管理してきたのはカイコだけではなく、桑畑を含めた仕組みのほうです。桑の葉にはイミノシュガーやポリフェノールといった成分が含まれており、カイコが桑の葉を摂取する過程で、桑葉由来のイミノシュガーを体内に蓄積することも報告されています。

ただし、カイコ由来の食品に含まれる成分やその量は、品種、飼育条件、原料として使う部位、加工方法によって異なります。品種のあいだで含量を比較した報告では開きが確認されています。原料が何かではなく、最終製品にどれだけ含まれているか。見るべきなのは成分がどれだけ含まれているかという規格値のほうです。

クリニックでサプリメントを扱うときの位置づけと確認事項

こうした素材を用いた食品を外来で案内するとき、役割は患者さんの栄養状態を支えることです。治療そのものではなく、指導や薬物療法を進めたときに生じる栄養面の課題を、日常の食事の側から補うものとして認識することが重要です。

患者さんは必要性を理解していても行動に移せず、次の受診までの3か月間、医師は関与できません。この期間に、食事のたびに手に取るものがひとつあることが、行動を維持する手がかりになる場合もあります。

患者さんに対しても、サプリメントは補助食品なので疾病の診断、治療、予防を目的とするものではなく、食事療法、運動療法、薬物療法の代わりにもならないことは伝えておく必要があります。

カイコ由来の食品の一例として、Morus株式会社がカイコ由来原料「MorSilk®」を用いた「KAIKO」を開発しています。同社はこの原料の研究開発と量産を行う研究開発型のメーカーで、シンガポールをはじめとする海外市場でも展開しています。植物由来の素材が中心のこの分野では、動物由来の供給源にあたります。外来で案内するか、販売するかは、メーカーの説明だけで判断せず、機能性表示食品としての届出の有無、最終製品を用いたヒト試験、安全性、成分の規格値、品質管理の資料を見たうえで、医師が個別に判断することになります。

医療機関が食品として院内で販売する場合、購入費用は原則として患者さんの自己負担になります。院内に在庫を置いて販売する方法と、製品情報だけを案内して患者さん自身に購入してもらう方法があります。食品の販売そのものと、自由診療として行う診察や栄養指導は、分けて整理しておきます。

医療機関が販売による利益を得る場合は、その事実を患者さんに明示し、購入は任意であること、購入しなくても診療上の不利益がないことを説明します。医師の立場を利用して購入を促していると受け取られないよう、医学的な判断と販売上の利益は分けておきます。

導入を検討する場合は、少なくとも次の点を確認します。

  • 根拠と安全性:最終製品の有効性、安全性、成分の規格値、アレルギー物質の有無、医薬品との相互作用を確認できるか

  • 既存治療との関係:食事療法・運動療法や薬物療法の代わりではなく、併用する食品であると説明できるか

  • 費用と利益相反:患者さんの負担額と、医療機関が販売利益を得ることを明示できるか

  • 評価と中止の基準:何を指標に、いつ継続または中止を判断するか

とくに、評価の時期と中止の基準は開始前に決めておきます。効果が見えないときや、有害事象が疑われるときは使用を見直します。

まずはメーカーから資料を取り寄せ、最終製品の有効性、安全性、成分の規格値、品質管理の情報を見ることです。その資料だけで患者さんに医学的な説明ができるかどうかが、外来で扱うかどうかを判断する出発点になります。

【監修医コメント|五藤良将 先生】

「私はこの種の食品を、物販として置くのではなく、診療の一部として使えるかどうかで判断しています。順序は単純で、まず最終製品のヒト試験・成分量・安全性の資料を見る。次に、その資料だけで患者さんに自分の言葉で説明できるかを確かめる。ここで詰まるものは、どれほど話題性があっても外来には置きません。

併せて決めておくのが、やめる基準です。3か月なら3か月で何を見て、変化がなければ中止する。開始の基準より中止の基準を先に決めておくほうが、患者さんへの説明も楽になります。

保険診療だけで外来を組み立てることが難しくなっているのは事実です。ただ、その穴埋めとして物販を持ち込むと、いちばん大きな資産である信頼を削りかねません。自費でいただく対価は、製品そのものではなく、評価し、説明し、再評価するというプロセスに対するものであるべきだと考えています」

まとめ

  • 指導と薬物療法のあいだを一気に埋める選択肢は、現時点では存在しない。しかし候補を評価する枠組みは持っておいたほうがよい

  • 評価の条件は3つ。①想定する期間・摂取量での安全性 ②患者さんが無理なく続けられること ③根拠と限界を医師が説明できること

  • この領域の候補には、行動変容支援アプリやデジタル療法、管理栄養士による介入、オンライン栄養指導、食事宅配、CGMによるセルフモニタリングなどがあり、多くは体制や契約を必要とする

  • 栄養補助食品は体制や契約を必要とせず、患者さんの負担も小さい。栄養状態を支える手段として、外来で検討する余地がある

  • 続けやすさは、何を摂るかだけでなく、いつ・どのように摂るかの設計で決まる

  • 栄養補助を目的とした粉末製品はほぼ植物由来で構成されており、動物由来の選択肢はほとんどない

  • カイコは日本で長く産業利用されてきた素材だが、成分量は品種や飼育条件で大きく異なるため、原料の来歴ではなく最終製品の規格値で評価する

  • 外来で扱う場合は、食事療法・運動療法や薬物療法の代替ではないことを明確にし、届出の有無、根拠と安全性、費用と利益相反、評価・中止の基準を確認しておく

監修者

五藤 良将(ごとう よしまさ)

医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長/医療法人社団五良会 理事長

防衛医科大学校医学部卒業。自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどでの勤務を経て、2019年9月に継承開業。専門は総合内科で、糖尿病、AGEs、動脈硬化を研究分野とする。著書に『内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる 血液と体の「あぶら」を落とすスープ』(アスコム、2024年)。

所属学会・資格

日本内科学会 認定医/日本抗加齢医学会 抗加齢医学専門医/日本美容内科学会 評議員/日本旅行医学会 認定医/日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医・温泉療法医/日本医師会 産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/日本糖尿病協会 登録医/難病指定医

この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。


参考文献

  • 消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search

  • 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)~肥満症~」令和5年11月(令和8年6月改訂) https://www.pmda.go.jp/files/000281140.pdf

  • 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド ~肥満症~」令和7年3月(令和8年5月改訂) https://www.pmda.go.jp/files/000280607.pdf

  • 有吉範高(岡山大学 学術研究院 医歯薬学域 疾患薬理制御科学分野)「市販の国産桑の葉茶食品による食後血糖上昇抑制とその臨床的意義に関する臨床研究」公益財団法人 医食同源生薬研究財団 2025年度成果報告会 要旨集 https://isyokudogen-fnd.jp/web_isyokudogen/info/activity/(Prof.%20Ariyoshi)%202025Results%20report%20meeting%20summary%20collection.pdf

  • Chen H, Liu Y, Wang W, Olatunji OJ, Pan G, Ouyang Z. Proteomic-Based Approach to the Proteins Involved in 1-Deoxynojirimycin Accumulation in Silkworm Bombyx mori (Lepidoptera: Bombycidae). J Insect Sci. 2018;18(2):42. doi:10.1093/jisesa/iey007

  • Samappito W, Butkhup L. 1-Deoxynojirimycin and polyphenolic composition and antioxidant activity of different native Thai silkworm (Bombyx mori) larvae. J King Saud Univ Sci. 2020;32(6):2762-2766. doi:10.1016/j.jksus.2020.06.012

  • Christensen S, Robinson K, Thomas S, Williams DR. Dietary intake by patients taking GLP-1 and dual GIP/GLP-1 receptor agonists: A narrative review and discussion of research needs. Obesity Pillars. 2024;11:100121.

  • Morus株式会社 公式サイト https://morus.jp/jp/

  • Morus株式会社「Morus(モルス)、シリーズAで7億円を資金調達。カイコのバイオ原料で海外展開と研究開発を加速」PR TIMES、2025年6月30日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000091970.html